ご家族の誰かが亡くなり相続が発生し、「相続」が「争族」になってしまう・・・。「それは他所の話でうちの家族に限ってそんなことにはならない・・」とほとんどのご家庭が思っているのではないでしょうか。ところが遺産についての争いを家庭裁判所の「家事調停・審判」受件数で見てみると、1994年に約1万件であったものが2019年には約2万5千件と2.5倍に増加しているのです。遺言書が残されていない場合、相続人全員で遺産分割協議を行いますが、各相続人の思いやその時々の状況により協議がまとまらず、いつの間にか「争族」になっていまう事が多いのです。そうならないために、遺される家族のために、遺言を遺す事はとても大切なことと思います。弊所ではそのお手伝いをさせていただきます。
特に遺言書を遺した方がよいケースは以下の通りです
金銭であれば二等分でも三等分でも簡単に分けることができますが、不動産は簡単に切り分けできるものではありません。共有と言う選択肢もありますが、その後不動産の維持・処分などでトラブルになる可能性があります。。
お子様のいないご夫婦で、どちらかがお亡くなりになった場合、亡くなった方の親が健在であれば、法定相続分は、遺された方が3分の2、親が3分の1となります。親が亡くなっていて兄弟姉妹がいた場合、遺された方が4分の3、兄弟姉妹が4分の1となります。兄弟姉妹もなくなっている場合は甥姪が相続人となります。遺言書でより多くの遺産を遺された配偶者に残す事ができます。兄弟姉妹が推定相続人となる場合は遺言により全財産を配偶者に残す事ができます。
近年様々な多様化が進み事実婚も増加していますが、事実婚の場合お互いに相続人とはなりません。
前婚時の子供は、離婚後一緒に住んでいてもそうでなくとも相続人となります。遺された配偶者が一度も会ったことがなくとも相続人なのです。
たとえば息子が健在な場合その子(孫)は相続人にはなりません。息子の妻、従妹なども相続人にはなりません。相続人以外で生前お世話になり、何かを残したいという場合には遺言書で遺贈を行います。ただし相続人の理解を得ておくことが大切です。
兄弟間では分割協議がまとまりづらくても、親の遺言書が道しるべになるのではないでしょうか。事前に子供全員と話し合う事が大切です。
令和4年度は「相続人がいない財産」として、過去最多の768億円が国庫に納められました。遺言によりお世話になった方へ財産をお分けすることができますし、応援したい団体や法人へ寄付をすることもできます。
遺書を作成する際の注意点として遺留分があります。遺言書を作成することにより、法定相続分とはちがう遺産配分をすることができますが、兄弟姉妹以外の相続人には「遺留分」が認められています。これは「遺された相続人が生活を送っていくため、最低限の財産は受け取れる権利」と言えます。もし自分の遺留分が侵されたと知ったときは、知ったときから1年以内、あるいは相続開始の時から10年経過する前に、遺留分侵害額請求権を行使する事ができます。逆に言うと、遺留分を侵害した方は侵害額を請求され支払う必要が生じます。遺言書を作成する際は遺留分に注意しましょう。
遺留分の割合は、相続人が直系尊属(両親や祖父母)だけの場合は法定相続分の3分の1、その他の場合は2分の1となります。たとえば相続人が妻と子供3人の場合は
妻の遺留分=1/2(法定相続分)x1/2=1/4
子1人あたりの遺留分=1/6(法定相続分)x1/2=1/12
となります。
遺言には普通方式(自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言)と特別方式遺言(臨終遺言、隔絶地遺言)の2種類5方式ありますが、一般的なのは自筆証書遺言、公正証書遺言です。
自筆証書遺言は、遺言者が遺言書の全文、日付、氏名を自署し、これに押印することにより成立します。証人等は不要で費用も掛からず、紙と筆記用具があれば誰でも作成できます。
簡単に作成できる一方、法定の様式を欠くと遺言書が無効となる場合があります。また紛失、変造などの危険もあるため、相続発生後、家庭裁判所の検認手続が必要となります。(法務局で保管されていた場合は不要)
・原則全文自署
全文自署によらなければならず、パソコン等の機械で作成されたものは無効となります。ただし2019年1月13日以降に作成されたものについては、遺言書に添付する財産目録はパソコン等の使用が認められています。ただし財産目録の各ページに署名・押印が必要です。
・日付
作成月日のない遺言書は無効です。年月だけで日付の無いものは無効です。「〇〇年3月吉日」のような記載も無効となります。
・氏名
氏名の無いものは無効です。本人の同一性が認識できれば通称も認められていますが、トラブルを避けるためにも本名を記すべきでしょう。
・押印
印は認印や拇印でも良いのですが、偽造や変造を避けるためにも、実印を使用しましょう。
・加除訂正
遺言書の仲の字句を訂正したり、文字を加除したりできますが、偽造・変造でないことを明らかにするため、加除訂正の事実及び箇所が確証する必要があります。方式に沿っていないと加除訂正が無効となってしまいますので、新たに書き直す方がおすすめです。
なお封印することは要件ではありませんが、偽造・変造防止のためにも封印することをおすすめします。
法定の様式となっていないための無効や紛失、偽造等、またそもそも自筆証書遺言が発見されないなど、自筆証書遺言の問題点を解消する目的で、2020年から法務局による自筆証書遺言保管制度がスタートしました。
・自筆証書遺言を作成する
用紙サイズや筆記具の制限、余白の確保など注意点があります。
・申請する遺言書保管場所を決める
保管申請できるのは、①遺言者の住所地、➁遺言者の本籍地、③遺言者が所有する不動産の住所地、のいずれかを管轄する遺言書保管所となります。
・申請書作成
申請書は法務省のホームページからダウンロードできます。
・保管の申請の予約をする
遺言者が複数人の場合はそれぞれの予約が必要。予約は専用ホームページから行います。
・保管の申請をする
遺言者本人が保管場所に出向きます。必要書類は
①遺言書 ホチキス止めはしないでバラバラで持参します。
➁保管申請書
③添付書類
本籍と戸籍の筆頭者の記載のある住民票の写し等
④顔写真付きの官公署から発行された身分証明書
マイナンバーカード、運転免許証、運転経歴証明書、パスポート等
⑤手数料
1通につき3,900円。収入印紙を貼って支払います。
・保管証を受け取る
遺言者の氏名、出生の年月日、遺言保管場所の名称および保管番号が記載された保管証が渡されます。
保管後は、遺言者が遺言書の閲覧をしたり、撤回、変更も行うことができます。また相続人等が、遺言書が預けられているか確認したり、遺言書の閲覧をしたりすることもできます。制度開始から2023年11月までの累計保管数は63、998件となっています。
公証人が筆記し公証役場で保管されるので、基本的に無効になったり偽造されたりと言う心配がありません。ただし公証人の手数料が発生します。手数料は相続人や受遺者の受取る財産額や人数により変わります。
公正証書遺言作成には2人以上の証人の立会いが必要であり、証人には一定の判断能力が必要です。遺言の内容を知る立場にあるため、遺言者と利害関係があってはなりません。従って、未成年者、遺言者の推定相続人、受遺者およびその配偶者ならびに直系血族は証人となれません。兄弟姉妹が推定相続人となっていない場合は証人になれます。なお公証人及びその関係者もなることはできません。証人が揃えられない場合公証役場で用意してもらえますが別途費用が掛かります。
遺言者が公証人に遺言の趣旨を口授し、公証人がこれを筆記して遺言者および証人に読み聞かせます。遺言者および証人が内容の正確なことを承認した後、各自が署名・押印し、公証人が方式に従って作成されたことを付記し署名・押印します。
まず、遺言の目的である財産の価額に対応する形で、次のとおり、その手数料が定められています。
(公証人手数料令第9条別表)
上記の基準を前提に、具体的に手数料を算出するには、次の点に留意が必要です。
・相続人ごとにその財産の価額を算出し、これを上記基準表に当てはめて手数料額を求めます。
それらの手数料額を合算して全体の手数料を算出します。
・ 全体の財産が1億円以下のときは、上記によって算出された手数料額に1万1000 円が加算されます。これを「遺言加算」といいます。
・遺言公正証書の作成が嘱託人の病床等で行われたときは、上記 によって算出された手数料額に、50 %加算されることがあります。また遺言者が、病気等により公証役場に出向く事ができず、公証人が、病院、介護施設等に出向いて遺言公正証書を作成する場合には、公証人の日当と現地までの交通費が掛かります。
弊所では、遺言作成時の注意点をアドバイスすると共に、遺言者の思いがご家族に伝わるようお手伝いさせていただきます。公正証書遺言の場合は、公証役場との日程調整とさせていただきます。